営業再開前、パン屋とは別の分野であるお話をいただいた

営業再開前、パン屋とは別の分野であるお話をいただいた。

私は若い女性と対談する予定だった。

 

関係者から彼女の話を聞くかぎり、若いころの自分と重なる点が多く、

針をちょんっと刺しただけで破裂しそうな風船のようで、簡単に死んでしまうような気がした

 

若いなら、まだ自分がわからないのは当然

悩みの根源にさえも気がつけない

もし自己否定や自己嫌悪を長年抱えているなら

それがいつしか希死念慮に変わり

彼女にまとわりついているかもしれない

 

自覚のないその気持ちが

なんらかの刺激で喚起され

並木崩しのように精神衛生面が

悪くなる場合がある

 

私と話すだけで変わるわけはない

他人は変えられない

大して期待されていないはずだとわかっていても

未来と希望のある貴重な若者を

守らなければならない気もした

 

結局は自分がいちばん

可愛いのかもしれないけれど

結果的にお断りしたのは

よい選択だったと思う

 

不特定多数の人から

一方的な判断・評価される環境に身を置いて

心のバランスが保てるだろうか

私はそんなに強くない

心の回復のためにふたたび

長期休暇に入っていたかもしれない

 

多くの人にとって

メディアは娯楽でありながら

日常のうっぷんを晴らす対象でもある

人は好き勝手いう

縁もゆかりもない遠い存在であるほど

 

負の感情をぶつけられる可能性は十分にある

無抵抗のサンドバッグと化す自信も覚悟もない

やっぱり怖い

 

「パン」という製品を作るには

さまざまな工程において集中し

目を配らせなければならない

 

心のバランスがとれなくなり

パン作りに対する

集中力を削られるのは大変困る

 

計量にミスがないか

こねあげ温度を調整する準備はできているか

粉、水、室温の把握

酵母を管理できているか

製造過程で異物が入らないように

清潔であるか

 

ひとつでも欠けてはならない

すべて結果につながる

 

日が当たらない場所でコソコソと

焼きあがったパンをみて

ガッツポーズできるような仕事をして

喜んでくれる人がいればそれでいい