2023-01-01から1年間の記事一覧

2023年のご挨拶

せいわやが2月18日にプレオープンして以来、日々たくさんのお客さまにご来店いただきましたこと深くお礼申し上げます。 「ありがとうございます」のありきたりな言葉ではなく、店主の独自のご挨拶を述べようと考えていましたが、ぐるぐると考えても、やはり…

かがんで靴紐を結んで立ち上がると、生まれて初めての光景がそこにあった

シュトレンの材料を買い忘れちゃった。駆け足で玄関から飛び出し、かがんで靴紐を結んで立ち上がると、生まれて初めての光景がそこにあった。 生まれて初めての”それ”は、ちょうど高い建物との間にある雲ひとつない黒い空に、なんの前触れもなく現れたエメラ…

凍えるような風が頬と身体を激しくかけ抜けていくとき

凍えるような風が頬と身体を激しくかけ抜けていくとき、思い出す断片的な過去の記憶。灯油とストーブの香り。まだ世の中のことなんてこれっぽっちも知らなかった頃、お気に入りのピンクの長靴をはいて父と遊んだ、雪が積もった一面真っ白な畑。お仕置きとし…

「なんでパン屋やってるの?」と聞かれたら

「なんでパン屋やってるの?」と聞かれたら「私が唯一世の中で貢献できそうだなと思う分野だから。誰かの役に立っているかもしれないと感じられる仕事だからです」と、答えると思います。 もっと突き詰めて考えると”誰かのために働くのが結果的に自分の幸せ…

「なんでパン屋やってるの?」と聞かれたら

「なんでパン屋やってるの?」と聞かれたら「私が唯一世の中で貢献できそうだなと思う分野だから。誰かの役に立っているかもしれないと感じられる仕事だからです」と、答えると思います。 もっと突き詰めて考えると”誰かのために働くのが結果的に自分の幸せ…

父と2人暮らしをはじめたばかりの11歳のとき

父と2人暮らしをはじめたばかりの11歳のとき。父は仕事で不在気味で、病気も患い長期入院。ひとりの時間が多かった幼少期。寂しさはあったものの、もの作りの下積みのような時間であり、今思えばあの時間があったからこそ今につながっているのかなと思います…

工房の奥にある、ピンチハンガーにぶら下がったクタクタに使い古されたボロ雑巾がふと目に入って「あぁ、今の私みたいだな」と思いました

工房の奥にある、ピンチハンガーにぶら下がったクタクタに使い古されたボロ雑巾がふと目に入って「あぁ、今の私みたいだな」と思いました。そうなるくらいに仕事に打ち込む時期があっていいと思うんです。辛さを我慢するのが美徳ではない。栄養のある食事を…

バゲット作り、迷走の時期に入っていました

バゲット作り、迷走の時期に入っていました。寒い時期は特別に気をつけなくても毎回いいバゲットができていたのに、室温が30℃をこえるようになってくると途端に不安定になるのは何でだろう。やっぱり暑いからです。 パン全般的に言えることですが、どのパン…

せいわやは週2、3回しか営業していないけどほかの日は何してるの

せいわやは週2、3回しか営業していないけどほかの日は何してるの?営業日にショーケースに並ぶパンたち。ズラリと整列するのは、製造過程においてほんの一瞬でしかありません。仕込みにほとんどの時間をかけています。自家製酵母パンが形になるまで最低3日か…

営業再開前、パン屋とは別の分野であるお話をいただいた

営業再開前、パン屋とは別の分野であるお話をいただいた。 私は若い女性と対談する予定だった。 関係者から彼女の話を聞くかぎり、若いころの自分と重なる点が多く、 針をちょんっと刺しただけで破裂しそうな風船のようで、簡単に死んでしまうような気がした…

やらなきゃアカンことは やらなきゃアカンのです

やらなきゃアカンことはやらなきゃアカンのですやらない理由を見つけたり休む口実を見つけようとするずる賢い自分がひょっこり現れるのが嫌でたまらないやりたくないだとか休みたいだとか面倒くさいだとか“マイナスの感情を抱く”という心の営みそのものが行…

人間、ダメなときもある

人間、ダメなときもある。暗い穴底に落ちすぎて頭上にある光は、豆粒のように小さくみえる。遠すぎる。登る気力さえも起きず、私には明るい向こう側の景色を眺めるなんて無理なのだ。いっそうのこと誰も寄りつかない底に居続けるのも悪くないのではないか、…

銀行から借りるお金が多いほど世の中の役に立っている

「私は産業を作り、誰かが働ける場所を作るのはいいことだと思っているよ」 千葉県の南に位置する、千葉県南房総市。フロントガラス越しに、右手には永遠と続いているのではないかと思うくらいの水平線が広がる。波が規則的におきて白い泡になって消える。海…

開業前はこんな未来がくるとは思っていませんでした

8月下旬に差し掛かって、やっと夏休みに入ったような気分になれています。 これまで貯めておいた、お客さまからいただいた直筆のお手紙を収納棚から出し、机に広げ、どこに何を貼るかに悩みながら、1枚ずつのり付けをしてノートに貼る余暇。 大小異なるお手…

大人になっても思い出す、あの人の泣き顔

もう20年も前になる。泣いているあの人を思い出す。 私は9歳だった。泣いているあの人を前にして、その場に立っていることしかできなかった。子どもであることを悔やんだ。なんて頼りなく、無力なのだろうかと思った。私の肉体がそこに存在しているだけで、…

己の無能さ、至らなさに打ちのめされていたい

己の無能さ、至らなさに打ちのめされていたい ときには能力が高い人と積極的に関わり または様々な人たちが集まる場に出向いて 出しゃばったプライドをへし折る それは自分のために わたしの上には 想像するよりもはるかに大きく 広大な景色が広がっているの…

もし大災害が起きたときにパン屋は

もし今、大きな災害が起きたとして ライフラインが止まり、食糧の供給までうまく回らなくなったとしたら 私がやるべきことはもう決まっているパンを無償で提供することです お店の前にテーブルを置きパンを並べて どうぞ持っていってください 困ったときはお…

他人に優しくできない働き方

ひとりきりの工房で息をきらし 休憩を、仮眠をいつ入れようかと考えながら 仕込みをする日が続いていたその時 他人に優しくできない働き方って どうなのかなと思ったのです 自分のことしか考えていないではないか、と 仕込みに忙しく余裕がなくなると 作業中…

電源に繋がれたステンレスの塊にはなりたくない

大量のパンをつくりただ売上を伸ばすのと 少量のパンを作り ひとりの方に深く喜んでもらうのだったら わたしが選ぶのは断然、後者なのです たとえ大量に製造して 過去最高の売上を生み出せたとしても ただ機械的に、ただ量産的にでは 嬉しくない 大量製造す…

不恰好なパンを私以外の誰が愛してやれるのか

不恰好で発酵があまくて 理想通りのパンが焼けなくても だからといって嫌わずに ひとつずつ可愛がってあげる優しさが 私には必要なのかもしれない 過発酵なもの 明らかに形の悪いものがあれば 自宅用のパンとして転生します でも、パンはパンなわけです 平く…

働き方を改めなければならないかもしれない

働き方を変えなければならないのかもしれません 夏の気配が近づいてきました 今週もたくさんのご来店 ありがとうございました 本日、お客さまからクレームをいただきました 残念なお気持ちを責任を持って 受けとめなければならない ショーケース前から飛びだ…

ライ麦100%のドイツパン ロッゲンブロート

せいわやのライ麦100%のドイツパン ロッゲンブロートは 焼く前日から準備がはじまります サワー種にぬるま湯と ライ麦粉をくわけて増やします このとき大切なのが 仕上がり温度 温度計でサワー種 水温、粉の温度をはかり 決められた温度に仕上がるように 調…

人生の目的は模索と失敗と挑戦が混ざりあう激しい渦のなかに

勉強する時間がほしい 海外の製パンに関する本を翻訳して 実際に焼いてみる 配合比率を変えて食べ比べをしてみる 今年のクリスマスにむけて シュトーレンの試作をする ありきたりではつまらない せいわやならではの 想いの詰まった商品を開発する そしていつ…

日々作り出すもので誰かの不足を補えたら

ただパンを焼いているだけなのに 優しく、親しみを持って接してくれる お客さまばかりなのは なぜなのだろうと パン作りは難しい所もありますが 基本の”型”が決まっているので その通りにやればいい 生地の状態を柔軟に 見極められるようになり パンを焼く「…

やる側にしか分からない「ありがとうございます」の重み

「ありがとうございます」 お店を後にするお客さま 1人ひとりにかけるこの言葉に どれほどの重みがあるか きっと 私たち夫婦にしか 分からないことでしょう ひとり製造のため ご用意できるパンには限りがあります 整理券制になりお客さまには 2回も来ていた…

「美味しいものを作る」が本当にお客様のためになるのか

「美味しいものを作ろう」 工房で作業しているとき 気がつけば頭の中は この言葉でいっぱいに でも、そこまで 過剰な美味しさを追求しなくても いいのではないか、とも思います 諦めではありません ザクザククリスピーな食感 とろーりもっちり コーヒーで流…

ハードパン ドイツパン専門店が毎日営業しないワケ

お客さまから「毎日営業してほしい」 「オープン日数を増やしてほしい」 という声をいただきます ありがたいお言葉です それほど食べたいと 思ってくださっている ですが 自家製酵母を使用したパンの特性と 深い香り、味わいを引きだす製法をとりながら 十分…

必要なのは、つまり愛

たくさんのお客さまが 来店してくださり こんなに買ってくれる なんて、ありがたいんだろう 営業するたびに その気持ちを噛み締めています こんな私が作ったものを 喜んでいただけるのは 不思議な現象であると捉えている 一面もあります いただくお金は 商品…

虐待の体験について考える

私は7歳から11歳まで継母から虐待を受けてきた。詳細を語るのは控えるが、種類としては身体的虐待、心理的虐待に分類される。 普段触れるのを避けてきた“虐待の体験”について考える。暴力や暴言などは単なる「その瞬間の出来事」なだけであり、人間の存在価…