2023年のご挨拶

 

 

せいわやが2月18日にプレオープンして以来、日々たくさんのお客さまにご来店いただきましたこと深くお礼申し上げます。

 

「ありがとうございます」のありきたりな言葉ではなく、店主の独自のご挨拶を述べようと考えていましたが、ぐるぐると考えても、やはり感謝の気持ち以外に述べることはありません。

 

生地を仕込んで焼く。この作業を幾度となくくり返しても心底、納得できるパンを焼けていません。今日はいい感じと思う日があっても、それは一瞬で、両手で水をすくうように、あっという間に指の間からサラサラと流れていく。改善点を考え修正をくり返し、よい仕上がりを保っていく。両手から水がこぼれないくらいプロレベルの製品を安定して生み出すには、きっとものすごく長い年月がかかることでしょう。

 

とくに2023年、肌寒い季節に差し掛かったあたりで少しパンを焼くことから離れた方がいいのかなと悩みながら営業していました。 

 

“未熟な私”が置いてきぼりにされたまま、前ばかり進んでいるような感覚が常にある。自分の中にあるものを吐き出し尽くし、魂のかけらは使い果たし、それでも焼く日々は、透明で薄っぺらい何かを生み出しているかのようだったからです。焼きあがり続けるパンたちに、一体思いは込められているのか。

 

では、仮に立ち止まったとしてどうするのか、という話になります。結局どんな状況であれ、パンは焼かなければならない。

 

多分、未熟な私のまま、パンを焼いて皆さまに届ける「緊張」と「責任」を伴うおこないから逃げたくなったのでしょう。100点の仕事ができない自分で勝負をすれば、必ず失敗し、上手くいかない状況に必ずぶつかる。目に見えている。それが怖くなったのです。

 

たとえ70点、60点の仕事だったとしても、誰にも貢献できないのかと言ったら、そうではない。勝負しながら100点を目指して焼く。本当にせいわやを好きでいてくれる方は、私が目指す道を一緒に並んで歩いてくれるに違いない。と信じて、これからも私なりの道を進んでいきたいと思います。

 

まだまだ店主として、作り手として未熟な部分は多いと自覚しています。「指導」という言葉にさえも不向きでありながら、誰かと一緒にお店を運営する試みも今年が初めてです。「上から教える」ではなく、お互いに横並びになり、ときに教わりながら、共に考えられる人であろうと思っています。

 

最後に。2023年12月24日まで無事に営業を続けられたのはご来店してくださる皆さま。せいわやの業務を支えてくれているアルバイトの方々。夫の存在。すべてが揃っていたからこそです。

 

出会いもあれば別れもある。人が老いて死んでいく自然の摂理のように変化しないものはない。変化はときに寂しく苦しい。しかし変化そのものに執着せず、受け入れ、別れがある時は笑顔で送り出す。今後、せいわやがどんな形になろうとも、この気持ちは忘れずに。

 

2024年もどうぞよろしくお願い申し上げます。そしてあなた自身と、その周囲にいる大切な人たちがよいお年を迎えられますよう、心よりお祈りいたします。

 

ハードパン・ドイツパン専門店

せいわや 店主