不恰好なパンを私以外の誰が愛してやれるのか

 

不恰好で発酵があまくて

理想通りのパンが焼けなくても

だからといって嫌わずに

ひとつずつ可愛がってあげる優しさが

私には必要なのかもしれない

 

過発酵なもの

明らかに形の悪いものがあれば

自宅用のパンとして転生します

 

でも、パンはパンなわけです

平くても団子でも

混ぜて発酵させて焼けばパンになる

 

ハードパンに挑戦してみよう

はじめて焼いたのはバゲットでした

 

出来あがりは黒糖菓子のように真っ黒で

ガリガリすぎる皮と苦味で

到底バゲットと言えない出来栄え

けれども、パンはパン

 

気に入らない

格好が悪い

美しくないと

否定しているばかりで

 

出来あがったパンを

いったい誰が

受け止めてやれるというのか

 

材料を作ってくださった

生産者への愛もない

 

素手ではつかめない

焼きたての皮の熱さや

染みだす酵母の香り

ひとつずつ違う断面の気泡や

クープの表情

 

無事に焼けてくれたことに

温かい気持ちでありたい

あなたはただ

そこにいるだけでいいのだと

 

人に対してもそうであるように