工房の奥にある、ピンチハンガーにぶら下がったクタクタに使い古されたボロ雑巾がふと目に入って「あぁ、今の私みたいだな」と思いました

工房の奥にある、ピンチハンガーにぶら下がったクタクタに使い古されたボロ雑巾がふと目に入って「あぁ、今の私みたいだな」と思いました。そうなるくらいに仕事に打ち込む時期があっていいと思うんです。辛さを我慢するのが美徳ではない。栄養のある食事をとり、よく寝て、いい状態で仕事に挑んだほうがいいに決まっている。

 

ただ、一生に一度くらいは食べるのも、寝るのも、身なりを整えるのもすべて放り出してガムシャラに。自分自身のからだより仕事を優先するくらいの行動が今のわたしには必要だと何となく感じていて、

 

それはきっと”正社員制度”という日本独特のシステムが未経験なことや今までのキャリアに対するコンプレックスの穴埋めでもあり、昔から細くながく引きずり続けている、いつも内側に隠している解決しようもない悩みを紛らわしたいから、という理由も少なからずあるかもしれない。

 

”悩み”は自分に意識が向きすぎている状態。自分よりも外の世界、仕事やお客さまに注目して自分から意識をはずすことで、癒しにもなるのは日々感じていることであって。

 

何よりも、限界を乗りこえた先の景色をみてみたい。疲労が抜けずに身体がしんどいのは、ほんのひと時。活性酸素が溜まって脳に疲労感のシグナルを送っているだけ。筋肉に乳酸が溜まっているだけ。騒ぐ必要はない。

 

まったく無関係の職種から、飲食の世界に飛びこんだのは2年ちょっと前。あの頃はまだ右も左も分からず、飲食店の厨房に入るのでさえ震え、営業中は戦争のようで。ぼーっとしていたら流れ弾に当たって死ぬ、くらいの戦慄した緊張感で潰れそうにもなった。

 

正直「こいつ大丈夫かよ」と思われていたに違いないけれど、そんななかでも毎日のように限界を越えさせてもらったのが今となってはよかった。一から十まで任せていただきありがとうございます。雪の日も歩いて30分以上かけて出勤しました。その節はありがとうございます。

 

一度限界を乗り越えると、限界値がふえる。さらに仕事ができるようになる。現在の許容範囲が把握でき、自分のレベルに応じた仕事の工夫をするようにもなるし、なぜ時間内にできないのか模索もできる。やはりひとりでは難しい仕事量なのではないか?とも一旦冷静にもなれる。

 

たった2年。2年でここまでこれた。あの頃、頑張ってよかったと思うためにふたたび限界を越えよう。未来のわたしのためが、めぐりにめぐって誰かのためにもなるなら。