人間、ダメなときもある

人間、ダメなときもある。暗い穴底に落ちすぎて頭上にある光は、豆粒のように小さくみえる。遠すぎる。登る気力さえも起きず、私には明るい向こう側の景色を眺めるなんて無理なのだ。いっそうのこと誰も寄りつかない底に居続けるのも悪くないのではないか、ここで終わりにしようか、とさえ思うときもある

登る方法がないわけではない。自分を光の向こう側に押しやる方法や選択肢はいくつかある。それは「ジャックと豆の木」の反対のような、穴底にむかって垂れ下がるつる。あるいは、底から這い上がる唯一の方法。藁にもすがりたい、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」である。気になったつるやら、糸やらを選び、掴んで登ればいい。物事を解決するには、気力がないだとか余計な感情を含めずに行動すればいい。もし蜘蛛の糸を選び欲にまみれていたら、穴底に逆戻りしてしまうけれど。

でも、底に落ちたのなら、あとは登るだけ。落ちては登って。落ちては登って。上下しながらいい方向に進んでいければいい。上手くいかなくても前を向こうとしている心情を持っていること自体、偉いとしておく。