せいわや

千葉県船橋市の住宅街で自家製酵母のハードパン・ドイツパン専門店を営む傍ら、農業をしている店主の備忘録です

なぜ週3営業なのか 自家製酵母パン屋の週間スケジュール

自家製酵母のハードパン・ドイツパン専門店を千葉県船橋市高根台で営んでいます。店頭販売、予約販売・通販を組み合わせて週2〜3回営業しています。加えて50坪の畑を借りて週末農業もしています。

パン屋=毎日営業しているイメージを持たれている方が多いのではないでしょうか。独学でパン作りをする前、私もそう思っていました。

お客さまも疑問に思われるようで、

「なぜ週2〜3回しかしないの?」

「営業日は増やさないの?」

と、よくご質問を受けます。

ご質問には「仕込みに時間がかかる」「自家製酵母だから」などと簡単にお答えしていましたが、週2〜3回営業の大きな理由としては5つあります。

①複数の自家製酵母を使いパン作りをしている

②1次発酵に18時間ほどかける「長時間低温発酵」を取り入れている

③自家製粉をしている

④人材が限られている

⑤体力的な限界

パンとして形にするまでに時間がかかっている。なおかつ夫婦ふたり+スタッフ3人体制。どのスタッフも別の仕事をされている中、協力してくれています。

「パン職人=男性の仕事」と想像されるかもしれませんが、パン作りの主体は妻側の私がおこなっておりますので体力のキャパシティが低いのも営業日を増やせない要因の1つになっているかもしれません。

また、おかげさまで個人店としては製造量が多い傾向にあると思います。1日の仕事量が多く、優秀なスタッフがいるからこそ何とか回せているのが現状です。

とはいえ、今のままでいいとは捉えていません。常に改善していけないものかと考えながら日々仕事をしています。

改善点がないか見ていくためにも、週3営業の場合どのようなスケジュールで動いているのか以下でまとめていきます。

〈補足〉
※ドイツパンは発酵補助にイーストを併用しています
※小麦の風味を活かすために微量イーストのみで作るパンもあります(ベーグル、プレッツェル)

月 仕込み準備日(4〜5時間労働)

・自家製酵母を冷蔵庫から取り出し復温する

・自家製酵母3〜4種をつなぐ

・粉の計量をする(20〜25kg分)

・必要があれば製粉、湯種作り、中種作りをする

・冷水を用意する(夏場限定)

・計量した粉を冷やしておく(夏場限定)

・必要があればナッツ類のローストをしておく

・必要があればフィリング作り

日曜日に畑に行けなかった場合、月曜日の起床直後に行く日もあります(体調、天候によっては行けない週もあります)

やることは少ないものの、酵母をパンにできる状態に育てるまでに時間がかかります。

火 ご予約販売・通販分の仕込み日(6〜8時間労働)

・前週の日曜日にご予約をうけた分の仕込みを10種類ほどをする

・金・土の営業日分の製造量を考えておく

・必要があれば酵母を復温しつないでおく

※スタッフの補助があれば2時間程度、労働時間が短くなります

水 パン焼成日+仕込み準備日(12時間労働)

・早朝からパンの焼成。冷めたら袋詰め+ラベルシールを貼る

・お渡し、発送の準備をする

・集荷対応

・店舗お渡しのお客さま対応

・自家製酵母3〜4種を復温しつないでおく

・粉の計量(20〜25kg分)をする

・冷水を用意する(夏場限定)

・計量した粉を冷やしておく(夏場限定)

・必要があれば製粉、湯種作り、中種作りをする

ありがたいことにご予約の件数が増えており、スタッフの手助けがあっても焼成→袋詰め→ラベルシール貼り→お渡し、発送準備の一連の流れが終わるのは12〜13時頃です。

集荷依頼の時間までに間違いのないよう終わらせなければならないので、張りつめた緊張感を抱きつつ駆けまわりながら作業をしています。

発送が無事終了後、ホッとしたいところですが、続けて翌日の仕込み準備があります。パンの仕上がりに左右するため自家製酵母の種つぎは必須。種がダメだと上手くパンになりません。

体力的に難しい場合、粉の計量は翌日にまわしても大丈夫でしたが、夏場はひと晩、冷蔵庫で冷やしておきたいので当日中に終わらせなければなりません。

木 仕込み日(6〜8時間労働)

・金曜日、土曜日分の仕込みパン12〜13種して1次発酵スタート

・翌日の仕込みに使う酵母を復温しつないでおく

・必要があれば製粉、湯種作り、中種作りをする

ハードパン・ドイツパン専門店せいわやでは「長時間低温発酵」という、1次発酵を長くとる形でパン作りをしています。酵母と生地を長く触れあわせ、ゆっくり発酵を進めると風味・香りともに向上するためです。

生地を仕込んだら、生地にあわせた温度帯で18時間ほど発酵させます。種類によっては冷蔵発酵または冷蔵熟成(オーバーナイト法とも表現します)をするものもあります。

※スタッフの補助があれば2時間程度、労働時間が短くなります

金 店頭販売日+少量仕込み日(12時間労働)

・早朝から営業日分のパンを焼く

・焼き終わった正午、翌日の仕込みを追加でおこなう

・14時から店頭に出て販売対応

・レジが落ち着き次第、店番をしつつ残りの片付け

木曜日に営業2日分の仕込みを完了させるのは難しく、また生地によっては前日仕込んだ方がいいものもあります。営業用のパンをすべて焼成後、追加で仕込みをします。パン焼成+仕込みをきっちり終わらせてから昼食休憩(30分ほど)となります。 

昼食後は開店準備。列の誘導用のテープ貼り。外の清掃やチェック。レジの立ちあげ。新商品があればプライスカードを書くなど。私に余裕がなければ、夫に仕事をまわします。

その間、マフィンとスコーンの焼成。品出しや清掃はスタッフが進めてくれているので大変ありがたいです。いつもありがとうございます。

土 店頭販売日(12時間労働)

・早朝から営業日分のパンを焼く

・14時から店頭に出て販売対応

・レジが落ち着き次第、店番をしつつ残りの片付け

・1週間の終わりの清掃タスクをおこなう

金曜日とは変わり翌日の仕込みがありません。パン焼成後はすぐ開店準備に取り掛かり、昼食となります。翌日の仕込みがない分、体力・精神的にも負担が少なく、やっと気持ちが落ち着く日です。

日 予約販売・通販のご予約受付日

・お天気がよければ畑に行く

・ご予約内容の詳細をインスタグラムでお知らせをする

・通販サイト記事の下書き、画像を編集して用意する

・20時からご予約を受け付ける

・雑務があれば工房に行く

主に水曜日に予約販売・通販をおこなっています。事前のご予約は前週の日曜日20時からWebサイトで受付をしています。

日曜日の最優先タスクはご予約受付準備。

起床後、すぐにセット内容を確定する

仕込みの手順を考える

焼成当日のスケジュールを組み立てる

インスタグラムにご予約詳細を投稿

ご予約ページ用の写真を編集

ご予約ページ用の記事を編集

という流れで進めます。

ご予約準備が終われば溜まった家事、掃除、作り置きのほか筋トレもしたいところですが、最近はご予約受付準備でほとんどのエネルギーを消費してしまうのが大半です。昼寝を挟んでから活動を再開するサイクルになっています。

いいパンのために営業日を増やさない

「営業日は増やさないんですか?」とご質問をいただけるのは大変有難いことです。それほど求めてくださっているのだと思います。

この質問を受ける度、品質を落とさず、製法を変えず、営業日を増やすのは可能かをしばらく脳内で考えます。

仮に木曜日に営業日を追加した場合

パン焼成→翌日営業分の仕込み→翌日使用する酵母をつなぐ+計量

の流れをくり返さなければなりません。

月 酵母をつなぐ計量など

火 ご予約分の仕込み+酵母をつなぐ計量など

水 ご予約販売・通販分のパンを焼く+翌日の仕込み+酵母をつなぐ計量など

木 店頭販売分のパンを焼く+翌日の仕込み+酵母をつなぐ計量など

金 店頭販売分のパンを焼く+翌日の仕込み+酵母をつなぐ計量など

土 店頭販売分のパンを焼く

日 ご予約受付

私の体力が無限大で、飲まず食わずに働けるなら実現は可能、といったところでしょうか。

店頭販売分のパンを焼き終えるのに6時間。まとまった仕込みをするのに4〜5時間。酵母をつなぎ計量を終えるのに2〜3時間(育つのを待つ時間も含む)私がタフであれば、どれだけよかったことか。

品数を数種類にしぼる。自家製粉をやめるならさらに実現に近づきます。しかし、店頭販売日は早くからお客さまにお並びいただいています。選ぶ楽しさを感じてもらうためにも品数は減らしたくはない。並んでくださる方のためにも、味の決め手になる自家製酵母も長時間低温発酵は手放したくはない。自家製粉100% 玄麦-くろむぎ-のパンを目当てに来店される方もいる。

ひとりでできる仕事には必ず限りがあります。アレもコレも諦めたくないなら、1番の課題はやはり「パン作りができる人材を増やす」であるのは明白です。ただしスタッフ側にも都合があります。忙しい中、来てくれています。ではどうするのか。今後お店を続けていく上でともに歩まなければならない課題です。

パンは慌てて作ってもいいものはできません。お客さまにはご不便をおかけし申し訳ありませんが、限られた人材、時間、体力の中でいいパンを作るには週3営業が限界である。という結論が変わるには、しばらく時間がかかりそうです。