ハードパン・ドイツパン専門店せいわやの店主です。
パン屋にとって最も過酷と言える、夏。2024年7月末は気温が40℃近くまであがるので気をつけましょうという、日本列島のあちこちが真っ赤に染まったニュースまで。
夏だけ違う職業に転身した方がいいのでは。もしくは今後の気候変動を考えると、パン屋自体していていいのだろうか?とさえ考えるほどです。
夏場の工房は平均して36〜37℃近くまで上がります。過去最高気温は39.7℃にまでになりました。
エアコンをつけたら解決、とはいきません。業務用オーブンを高温で動かし続けますので、エアコンの冷風はオーブンの熱に相殺されてしまい効きません。オーブンの熱に勝るような大型エアコンを導入すると高額な費用がかかります。値上げしている光熱費。何をどうやっても熱くなるのに抗うのは現実的ではないでしょう。
このような中、熱中症にならずにどのように仕事をしているのか、という話をします。
サーキュレーターでせめてぬるい風を
気温が下げられないなら、体感温度を下げよう。網戸にすれば風が通って暑さがマシになるかと思いきや、ほぼ無意味な環境にあります。代わりに作業中はアイリスオーヤマの小型のサーキュレーターを回し、風の流れを作っておくようにしています。ぬるい空気の流れができるだけなのですが、汗が蒸発していくらか涼しいかも。
小型なのに強力な風を起こしてくれます。売り場や休憩スペースのエアコンを効かせるのにも重宝しています。
冷えた水を飲みながら焼く
マイナス2℃に設定している業務用冷蔵庫で水を冷やしておき、飲みながら焼いています。とはいえ焼成に集中していると手が止められず、つい忘れることも。焼成が終わるまでの間に飲んでいるのは500ml〜1ℓくらいでしょうか。
両脇・背中を冷やすアイスベスト
アイスベストとは、ベストと保冷剤が一体型になった冷却アイテムのこと。凍らせた専用保冷剤が入るポケットが複数ついており、着用すると両脇、背中がひんやりとしながら動けるというもの。
夫から工事現場の人や警備員の方が着用しているファン付きベストの購入はどうか?と、提案がありましたが、胴回りが膨らむと作業しにくい旨を伝えるとアイスベストを買ってくれました。
2〜3時間でぬるくなってしまいますが無いよりかはいい。無しで作業すると汗がダクダク、心臓はどきどきとするところ、アイスベストを着用するとダクダクどきどきが和らぐような。スタッフ用にも導入しました。
保冷剤がちょうど動脈など身体を冷やすのに適した位置にあり、理にかなっていそうです。避難所を設けておく
これだけ対策をしても36〜37℃の中で焼き続けていると尋常じゃない汗をかき、朦朧としてきて「あ、やばいかも」という感覚に陥ります。ひとり工房の片隅で座りこみ、真っ白になる日もよくあります。明日のジョーのように。
工房の裏には12畳ほどの部屋があり、その部屋のエアコンをつけておき避難所として用意しておきます。辛くなったらその部屋に逃げ込む。「変だな」と思ったら無理しないのが1番大切かもしれません。
ほぼ体温=室温 水分のみで耐えられる個体
せいわやではスタッフのシフトが入っていたら2人で焼き、お休みの日は店主が1人でパンを焼く、という形でやっています。そして、焼き切ったパンを追加焼きすることなく販売していくスタイル。
大体6時間、ほぼ休憩なく焼き続けます。メニューによっては6時間焼成した後、少し休憩をとり+で焼成する日もあります。
焼成している最中、一切食事をとりません。36〜37℃の環境下で水分のみ乗り越えられる私は、生物としてなかなかタフな個体ではないかと思っています。ただ、時間をかけて暑さに慣れできたとも言えます。時々、シフトに入るスタッフは慣れていないはずですので、辛くなる前に小休憩を挟むこと。水分補給の声かけをするようにしています。
工房は茹であがるような暑さ。きっと整理券待ちの方も同じなのではないかと、整理券待ちの方が早くから並びはじめたら心配で声掛けに行っていました。夏休み前、最後の営業日は整理券を配布する1時間以上も前から並んでくださる方がいて、声掛けに行くと明るく「大丈夫です」と言ってくださいました。
それでも心配で、オープン準備をしながら工房を右往左往するのでした。パンから離れたくなる季節にもかかわらず、せいわやをご利用いただき本当にありがとうございます。