ハードパン・ドイツパン専門店せいわやの店主です。これを書いている現在、オープンしてから1年半が経とうとしています。
あまり大きい声では言えないのですが、製パンの技術は独学です。はじめてパンを焼いたのは2021年末頃。そこから自家製酵母を起こし、専門書を読みあさり、飲食店に勤めながら自宅でハードパン・ドイツパンを焼く日々を送り、いいご縁に恵まれパン屋ができる好機と出会い、2023年2月にプレオープンするという流れでした。
自宅で焼いていたハードパンはこちら。
誰にも共有できずに終わってしまうのは寂しい。自宅でハードパンを焼けるようになりたい方に向けて、何度も失敗しながら見つけた焼くコツを書き残したいと思います。
失敗してもめげない心。絶対にいいパンを焼いてやるのだというやる気。それにこだわる執着心。忍耐があれば絶対に大丈夫です。自宅で本格ハードパンを焼くポイントは3つあります。
※以下では家庭用の電気オーブンを使用して本格ハードパンを焼く方法をお伝えしています。火傷のリスクや、オーブンの故障を伴う恐れがあります。実践する際は自己責任でお願いします。
※よいパンを焼くには、よい生地であるのも大切です。以下の方法を試しても生地の状態が悪ければ、クープが開かず、膨らまない可能性もあります。
①300℃まで出るオーブンを使用する
ハードパンを焼くには「高温」が必須条件です。300℃まで出せるオーブンが望ましいと思います。個人的に最高温度250℃のオーブンでは物足りない印象があります。私はヘルシオを使って焼いていました。
決して300℃で焼くわけではありません。温度が下がるのを見越して300℃に予熱をかけておきます。また、300℃で熱しても実際に300℃まで達していない可能性も考えられます(正確に温度を測りたい方は、庫内に温度計を設置するのもありです)
業務用の大きなオーブンに比べ、家庭用の小さいオーブンでは蓄熱量も少ないはずですし、開閉すると温度が下がりやすい。以下で説明しますが、ハードパンを焼くにはスチームを入れるのも必須条件であり、このスチーム注入も温度が下がりやすい要因にもなります。
従って、温度が下がってもいいように逆算し、300℃で予熱をかけておくといいかと思います。
ポイント
予熱はしっかりしておきましょう。私は30分間、予熱をしてから窯入れをしていました。
②付属の天板を使って下火の温度を高くする
デッキオーブンの業者さんもおっしゃっていたのですが、ハードパンの焼成には「下火の強さ」も欠かせないポイントです。下からの熱は、下からパンを突き上げて窯伸びさせる着火剤のようなものです。
私は付属の天板を逆さまにして庫内に入れ、天板ごと予熱をかけていました。あつあつになった天板が下火の役割を果たし、窯伸びしやすくなります。
窯入れする際は、木の板やプラスチック製の板にクッキングシートをひき、その上にパン生地を乗せ、庫内にある天板に向かって滑らせるように窯入れ。熱伝導のよい銅板、ピザストーンを使う方もいるそうです。
③軽石を熱してスチームを入れる
オーブン内にスチームを入れるには、さまざまな方法があります。霧吹きを庫内に吹きかける、生地に直接霧吹きをする、生地周囲に霧吹きをする、軽石を熱しておき水をかける、など。
私が実践してよかった方法は、軽石を熱する方法です。熱いスチームであるのが、立体的なクープを作り出すのによい働きをしていそうです。
前述の通り、予熱の際に天板も一緒に熱すると書きましたが、耐熱ステンレストレーに軽石を入れたものも一緒に熱していました。窯入れをしたら石に水を注いで素早く扉を閉じる、という流れ。このとき素早く上段に天板をさし扉を閉じる。生地の周囲にスチームが行き渡るのか、クープが開きやすくよかったです。
庫内の構成はこちら。
上段 天板1枚
下段 天板1枚
(パン生地を乗せる面積が広くなるように
逆さまにして使っていました)
底面 ステンレストレー+軽石
クープが開いた3〜5分後、上段の天板を外して焼き目がつくように工夫していました。
※ボウルを被せる、ストウブに生地を入れて焼く方法もあります。カンパーニュ1つだけ焼く場合は、耐熱ボウルを被せていました。
本格ハードパンを焼く実際のスケジュール
ミキシング
パンに合わせてパンチ
1次発酵スタート
↓
分割・ベンチタイム
↓
成形・2次発酵スタート
↓
2次発酵完了の30分前に300℃に余熱スタート
下段に天板を逆さまにして入れておく
スチーム用の軽石もステンレストレーごと熱する
↓
スチームの水を用意する
(注ぎ口が細いケトルや計量カップがあると◎)
窯入れ
軽石に水を注ぐ
上段に天板を入れる
↓
クープが開いたら上段の天板をとる
パンに合わせた温度に設定し直す
(私は250℃が多かったです)
↓
パンの向きを変えながら
よい焼き色がつくまで焼く
お試しください。