「ダイエット中は、低カロリー高タンパクな食事にしましょう」
筋トレブームによりダイエット中にタンパク質を食べる重要性は、多くの女性の耳にも届いているはず。
それは、私たちの身体はタンパク質でできているから。筋肉、肌、髪、臓器、血液などの原料になるため、タンパク質は欠かせない栄養なのです。不足すると、肌や髪の美しさが損なわれたり、貧血気味になったり、免疫力が低下して風邪をひきやすくなることも。
筋肉を落とさず、健康的に美しく痩せたいならタンパク質!
しかし、ダイエットだけではなく、過食克服する上でもタンパク質は絶対に外してはならないのです。
過食克服とタンパク質の関係性で鍵となるのは、タンパク質に含まれる「トリプトファン」と、トリプトファンから生成される「セロトニン」にあります。
タンパク質は「セロトニン分泌」と「心の安定」に深く関係する
過食克服とタンパク質は、どのように関係しているのか。
まず1つめは、セロトニンです。
セロトニンは、心を安定させる働きがある神経伝達物質です。別名『幸せホルモン』とも言われています。心に作用するだけではなく、セロトニン自体に満腹感を高める働きもあります。
このセロトニンは、動物性タンパク質に含まれる「トリプトファン」と呼ばれるアミノ酸を原料にして作られます。
このうち記憶、情動、気分などに関係するものはノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどであるが、これらはチロシン、フェニルアラニン、トリプトファンという必須アミノ酸から作られるので、どうしても食事、特に食肉から摂取せざるをえない。
タンパク質と脳の栄養~うつ病とタンパク摂取~ https://www.alic.go.jp/content/000141085.pdf より
一方セロトニンはトリプトファンから作られる(図3)。トリプトファンは植物性のタンパクには少なく、食肉や魚の肉に多く含まれる。
タンパク質と脳の栄養~うつ病とタンパク摂取~ https://www.alic.go.jp/content/000141085.pdf より
生成の流れとしては、『タンパク質→トリプトファン→セロトニン』です。
はじめに「セロトニン」と「心の安定」についてお話ししたのは、過食には精神状態がかかわってくるのが理由です。気分の落ち込み、憂鬱、イライラ、モヤモヤを食べることで発散しがち。
こうした「心のマイナスな動き」による過食を防ぐのに、セロトニンは大いに役立ちます。
ここで1つ知っておいてほしいのは、過食しがちな方は「何らかのストレスを抱えている状態」のため、慢性的なセロトニン不足が疑われることです。ストレス過多になると、セロトニンの分泌が抑制されるから。反対に、興奮、快楽、空腹感に関わるドーパミンが増加します。
なので、ストレスが多い自覚がある・過食しがちな方は、タンパク質を積極的に食べて、セロトニンの原料となる「トリプトファン」を摂取する意識を持ちましょう。
お菓子、パン、ご飯よりもタンパク質優先です!
(もちろん、炭水化物や甘いものを食べてはいけない、ではありませんよ)
セロトニンは睡眠を整える「メラトニン」を生成する
タンパク質に含まれるトリプトファンは、セロトニンの原料になる。
と、上記でお話ししました。
セロトニンの作用は、精神の安定だけではありません。タンパク質が過食克服の鍵となる2つめの理由は、睡眠の質を高める作用です。
私たちの睡眠に関わるのは、「メラトニン」と呼ばれる神経伝達物質。メラトニンは夕方〜夜にかけて分泌され、眠気を感じさせます。「夜になると眠くなる」のはこのため。
では、セロトニンとメラトニンがどのような関係があるのかというと...メラトニンの原料が、セロトニンなんです!
ということは、上記で説明した流れは『タンパク質→トリプトファン→セロトニン→メラトニン(NEW)』となります。
うつ病の原因といわれているセロトニンは、睡眠にも関係しています。セロトニンは、覚醒のホルモンで、朝分泌され、脳の働きが良くなります。
夜はセロトニンの分泌が減り、セロトニンからメラトニンがつくられます。メラトニンは脳の松果体でつくられるホルモンです。その働きは長く不明でしたが、近年の研究で睡眠誘導作用があることがわかってきました。
引用元:医療法人社団 いでしだ内科・神経内科クリニック/健康を損なう大きな原因は睡眠不足だったより http://www.ideshita-clinic.jp/columns/12_09.html
朝〜日中にかけてセロトニンが分泌。セロトニンが分泌されることでイキイキとして、活動的モードへ。そして、夕方にかけてセロトニンの分泌はへり、代わりにメラトニンが分泌されます。
メラトニンは朝〜日中にかけて分泌されたセロトニンをもとに作られますので、夜に近づくにつれて眠気がきます。
セロトニンの分泌量が多いほど、「夜はぐっすり!」ということ。
ここで、朝〜日中のセロトニンが少なければ、
- 寝つきが悪い
- 夜間起きてしまう
- ぐっすり眠れない
上記のような、不眠症状が起きることも。
眠れない夜はブルーな気分になり、そこから過食へと繋がることもあります。私は夜眠れないのに加え、憂鬱になると決まって過食していました(最近では、夜間に過食することを「夜間摂食症候群」、「夜食症候群」と呼ぶそう)
ぐっすり眠り、夜間の過食を抑えるにはセロトニン。
タンパク質を食べるだけではなく、朝日を浴びる、リズミカルな運動をする(散歩、エアロビなど)、前向きな思考をするでも、セロトニンが分泌されることがわかっています。
食事、生活面、思考。さまざまな方向から、セロトニンを意識してみてくださいね!
近年、「夜過食する」症状も摂食障害として認められています。「夜間摂食症候群」、「夜食症候群」と呼ぶそうです。もしかしたら、私もそうだったのかもかもしれません。以下、夜間の過食に関する記事を載せておきます。
・止まらない夜のドカ食い「夜食症候群」という摂食障害|時事メディカル
・摂食障害とはどんな病気?|たわらクリニック
タンパク質は満腹感を高める
タンパク質が過食克服の鍵となる最後の理由は、満腹感を高めることができるからです。
3大栄養素の中でもタンパク質は、満腹を感じやすく腹持ちがよいため、ダイエットに欠かせない栄養素として明らかになっています。
タンパク質の性質自体に満腹感を高める働きがあるのはもちろんですが、満腹感と腹持ちのよさの理由は単純で、消化に時間がかかるからだと私は思っています。
食品による消化スピードの違いをみてみましょう。
<食品の消化時間>
野菜・果物...30分〜1時間
米・お粥...2〜2時間半
卵焼き...3時間
生卵...2時間半
半熟卵...1時間半
ステーキ...4時間
野菜、果物、米とくらべると、タンパク質は消化に時間がかかります。
卵も加熱する時間が長いほど、消化に時間がかかっています。ステーキはなんと4時間! 火が通ったタンパク質を消化するのは、大変なようです。
「消化に時間がかかる=胃に長く滞留する」。これが、満腹感と腹持ちのよさに繋がっているのでは? と、思います。
(悪く言えば「消化に悪い」ので、胃腸が弱い方は気をつけてくださいね)
この消化スピードの違いを上手く利用すると、空腹を感じにくくさせ、食欲の暴走を予防できます。過食にもダイエットにも活用できますよ!
例えば、
<朝〜夕方>
朝〜夕方にかけて、消化に時間がかかるタンパク質をチョコチョコ食べておきます。常に消化していることになるので、空腹を感じにくくなるはず。
個人的におすすめしたいのは、固茹でのゆで卵です。パサパサなくらい固茹でなのがポイント。朝に1〜2個食べておくと、腹持ちがいいのかお腹が空きにくくなります。
<夜>
就寝中、空腹の方が睡眠の質があがると言われています。夕食の時間が遅くなる場合は、なるべく消化によいものを食べること。半熟卵、刺身、ササミ、豆腐など脂質が少ないタンパク質を選ぶと◎
というように、時間帯によって消化スピードが異なる食事を使いこなすといいかもしれません。
食べ方も工夫していきましょうね。
食事をすることで代謝があがる現象を『食事誘発性熱産生(DIT)』と呼びます。タンパク質を食べると、摂取カロリーの約30%が熱として消費されることが分かっています。また、安静状態でも代謝量は上がったままに。タンパク質を多くとると、その分消費カロリーも増えことになります
タンパク質の摂取量目安は「体重×1.5g」
ここまで、タンパク質の大切さをお話ししてきました。
では、一体どのくらいのタンパク質を摂取するべきなのでしょうか?
私が過食やダイエットの相談にお答えするとき、タンパク質摂取量の目安は「体重×1.5g」と伝えています。体重50kgなら75gです。しかし、この数値は目安なので、細かい摂取量は個人の体感によって変えてOK。
例えば75g分のタンパク質を3食にわけて摂取する場合、1食あたり25gになります。
食材に換算すると、こうなります。
【朝】鶏むね肉100g、ヨーグルト100g
【昼】ツナ缶1つ、卵2コ
【夜】絹豆腐1丁、納豆1パック
人によっては「そこまで食べられない」、「お腹がはってしまう」、「便秘になる」という方もいると思います。そんな時は、摂取量をへらしてもヨシ。
できれば咀嚼できる、微量栄養素も一緒にとれる食事からがベストですが、
「タンパク質をとっていても、何も問題ない」
「もっと摂れるようにしたい」
そういった場合は、プロテインをおすすめします。飲むだけで簡単、タンパク質補給です!
[itemlink post_id="11788"]
▲バルクスポーツのプロテイン。クリーム系のフレーバーが美味しい。ティラミス、ストロベリーショートケーキなど。お菓子を食べているよう!
[itemlink post_id="11789"]
▲ビーレジェンドのプロテイン。このメーカーはフルーツ系のフレーバーに強い。ベリー風味はジュースのようで最高に美味しかった...
[itemlink post_id="12304"]
▲「人工甘味料、香料が気になる」という方は、味のついてないプロテインを。我が家でも味なしのピュアプロテインを取り入れています。飲めないほど不味くはなく、クイっと飲めば大丈夫。ヨーグルトの乳清部分を薄めて飲んでいる感じ。タンパク質含有量を意識する方は、これ!
セロトニンを侮るなかれ!
過食が習慣になっている方は、「カロリーは足りているけど、栄養が足りていない状態」に陥っています。
例えば過食をするとき、割引のお惣菜、お菓子、アイス、パン、冷凍食品など。安く、血糖値があがり、すぐに食べられるものを選びがちです。自宅に帰ったらすぐに食べられるため、です。
例にあげた食品には、糖質と脂質ばかり。タンパク質だけではなく、ビタミン・ミネラル(微量栄養素)はほとんどゼロに等しいで。さらに、加工度の高い食品を消化するのには、栄養を消費します。
栄養のないものを食べるから、慢性的な栄養不足になる。だらかこそ「過食したから、明日は絶食しよう」と極端なことはNG。さらに栄養不足が加速するだけです。
また、11年間過食とたたかった私だからこそ言えますが、前述のとおり、ストレス過多な傾向にあります。痩せたい気持ちの強さ、食べたことに対する罪悪感、自己嫌悪、自己否定。自分を傷つける思考が多いので、ストレスが溜まりやすいのです。
栄養不足で起きる、セロトニン不足。ストレスが強い環境下による、セロトニンの分泌が抑制される状況。
心や睡眠が不安定になり、過食後の血糖値の乱れから空腹も感じやすい。「過食の負の連鎖」がつづきやすい環境です。
今後、ストレスを溜めない心のあり方・考え方に関する記事を書いていきますが、この記事でお伝えしたいのは「過食をくり返さないためには、タンパク質の摂取とセロトニンの分泌が大切」という意識を持つことです。
長くなりましたので、この記事のポイントをまとめて終わりにしたいと思います。
・タンパク質にはセロトニンの原料となるトリプトファンが含まれている
・「心のマイナスな動き」による過食にセロトニンは役立つ
・タンパク質の摂取量は「体重×1.5g」がオススメ
・問題を感じたらタンパク質量は減らしてもOK
・タンパク質が食べられないなら、プロテインを活用しよう
・眠りのホルモン「メラトニン」はセロトニンから作られる
・夜の過食予防にはセロトニンの分泌が大切
・タンパク質は満腹感を高め、腹もちがよい
・消化スピードの違いを利用して食事をすると空腹が感じにくくなる
料理が面倒くさかったら、ゆで卵でもツナ缶でもいいんですよ。
まずは何でもいいから、実践してみましょう。
少しずつ少しずつ、前へ!
参考文献
[itemlink post_id="11834"]
・「年齢とともにヤセにくくなった」と思う人ほど成功する 食事10割で代謝を上げる
[itemlink post_id="11835"]
・体重が増えやすい人、食生活が乱れている人…高たんぱく食が特に有益になる4タイプとは?|ライフハッカー